「ハッピーバースディっ!」
クラッカーから紙テープが飛び出す。
今日はあたしの誕生日。
親友の沙智と、クラスメイトの男子の佐倉、遠山。そしてあたしの四人は、たまにみんなで集まってこうして遊ぶ仲。
今日はあたしの誕生日を祝うために、みんなで沙智の家に集まってくれた。
みんなあたしの顔を見てニコニコ(あるいはニヤニヤ)笑っている。
沙智が作ってくれたケーキ。
佐倉が四つに切り分ける。
「四等分って、けっこう大きいね・・・。」
私が素直な感想を漏らすと、遠山が笑った。
「確かに言えてる。三崎、全部食べられる?」
「うん、沙智がせっかく作ってくれたからね。全部食べなきゃ!」
意気込んだような私の言い方が可笑しかったのか、みんな声をあげて笑った。
「なんか、ありがとね。わざわざこんなお祝いしてもらっちゃって・・・。」
「いやいや、当然でしょ!」
私の発言に、普段はおとなしいけどノリのいい沙智がおどけて応える。
「何歳になりましたかっ?」
「えーっ、聞かなくても分かるじゃん。」
「ほらほら、ノリが大事だよ?」
マジメなはずの遠山までそんなことを言ってくる。
「……15歳になりました。」
なぜか拍手が起こる。
照れて小さくなってしまったあたしを見兼ねて、遠山が「んじゃ、ゲームするか!」と言ってくれた。
「じゃあひとまず定番ってことで。」
佐倉が提案する。
「トランプ?」
沙智が問うと、佐倉は笑ってうなずいた。
実はこの二人ちょっといい雰囲気で、うちのクラスではちょっとした噂だ。
沙智を問いただしたら全否定したけど、沙智の目は気付くといっつも佐倉を見てるから、たぶん間違いない。
ちなみにもちろん逆もある。
佐倉が沙智を見てることも、だ。
「何がいい?」
佐倉がカードを切りながら尋ねる。
こういうときに仕切ってくれる佐倉は頼りになる。
だから、沙智が好きになるのもよく分かった。
で、そんな沙智は何のつもりか、あたしと遠山をくっつけたいらしい。
事あるごとにあたしたちを二人で取り残す。
確かに遠山のことは好きだ。たぶん友達として。
ただ、何でだろう。雰囲気が恋の方向へは行ってない気がする。
とまぁ、以上のようなことをこの前、沙智に話したら、猛烈な勢いで反撃された。
『絶対遠山は梨乃のこと好きだもん! 遠山ってば、梨乃ばっかり見てるんだよ? まったく、梨乃ったら自分のことには鈍感なんだから。』
だそうだ。
結局大富豪が始まり、みんな少し真剣になった。
「クラブの3誰?」
佐倉が問う。
「あ、私!」
答えた沙智は、やっぱり少し嬉しそう。
そんな沙智を見て、ふと横を見ると遠山と目が合った。
遠山は「かなわないよなぁ」というように苦く笑った。
そしてゲームは進んでいった。
今一番カードが多いのは遠山。さすがに焦り気味である。
「ごめ〜ん遠山、あたし一番弱いのこれだから♪」
楽しそうに沙智が言って、キングを出した。
「あぁ〜クソ、パスっっ!」
「またかよ〜」
佐倉がこれまた楽しそうにちゃかす。
頭をかかえる遠山。
哀れみも込めてニコニコ笑う沙智と佐倉。
遠山は背が高くて、頭もそれなりに良くて。
でも何でこんなに、ムキになるんだろう。
勝負になるといっつもこうだ。
結局ゲームは遠山の大敗。
一位は沙智で、二位は僅差で佐倉。三位があたし、四位があわれ、あまりに運が悪くて八枚も残っている遠山。
「じゃあ遠山は罰ゲームな!」
すごく嬉しそうに佐倉が笑う。
「はぁ? 罰ゲーム? 聞いてねーよっ!!」
「あたしも聞いてないよ?」
そう言うと、二人は顔を見合わせて意味ありげに笑った。
あたしがきょとんとしていると、佐倉が遠山の耳に何か囁いた。
「はあぁ〜っ!?」
途端、遠山が叫び、顔を真っ赤にした。
「や、やるわけないだろそんな罰ゲーム!」
あたしだけ何も分かってないみたいで居心地が悪い。
「ふぅ〜ん。じゃあ仕方ないね。梨乃、誕生日おめでとう!これ、 私からのプレゼントだよっ!」
沙智が綺麗に包まれリボンもかかった小箱をくれる。
「わぁ、ありがとっ!」
タイミングがおかしい気がしたけど、ここはもちろん素直に受け取る。
「じゃあこれは僕から。」
佐倉は細長い袋をくれた。ペンかなにかだろうか。
「ありがとう!」
「あれ〜?遠山、もしかして持って来てないのかな?」
「さっ、佐倉お前、持ってこないって言ったじゃねーか!」
「あれ? そうだっけ?」
佐倉は少し視線を斜め上へずらしてとぼけてみせる。
「ほら、じゃあプレゼント代わりに、さ。頑張れ、遠山くん!」
プレゼント代わり? 頑張れ? 全然わけが分からない。
「くっそ、お前ら、絶対笑うんじゃねーぞ!」
「もちろん。遠山くん真剣だもんね〜?」
沙智を軽くにらんだ遠山は、なぜか立ち上がってあたしの方を向いた。
「あ、あのさ、ちょっと、言いにくいんだけど……」
しどろもどろになる遠山。
佐倉と沙智が笑いをかみ殺しているのが空気で分かる。
でも、本当に何を言おうと……?
「好きだ。」
………………………
「はぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁっっ!?」
思わず絶叫してしまう。
もう二人とも顔は真っ赤に染まって。
数秒の沈黙がすごく長いものに感じられた。
でも、なんだか全てがつながった気がした。
佐倉と沙智の仲の良さのわけも。
わけ分からない状況の全ても。
そして、自分の心の中身も。
よく考えると、遠山に対する感情と佐倉に対する感情は違った気がするし。
「あ、あのね。」
おもむろに沈黙を破る。
「あ、あのっ、あたしも、好……き…………。」
瞬間、パァッと全員の顔がほころんで、拍手が起こった。
「遠山!」
佐倉が声をかける。
その声を合図に、遠山が少しずつ、近づいてくる。
彼がしようとしていることを一瞬で察した私は、そのゆっくりした仕草がわずらわしくて、でもどうしようもなく愛おしくて。
自分から立ち上がって、大きな遠山の胸に、飛び込んだ。
残る二人の目も忘れて。
―あとがき―
え〜っと、一応私の誕生日記念作品、のつもりです。
何だろう? ちょっとした理想、みたいな。
いや、そうでもないけど。
だってさ、そんな人の目も構わずそんなこと出来ないっ!!
まぁね。要するに誕生日を祝ってくださいってことです(なんだそれ。
急いで仕上げたので自分で書いておきながら変な文章です。
恥ずかしいのでその内消すかもね……。